マシンガンズ滝沢、ゴミに向き合うことで「人生が変わる」と発信し続ける理由

ゴミ清掃芸人としてブレイク中のお笑いコンビ「マシンガンズ」滝沢秀一。彼はなぜここまでゴミに執着するのか。

マシンガンズ・滝沢秀一

今年フジテレビ系で放送され大反響を得たお笑いコンテスト『THE SECOND 〜漫才トーナメント〜』で準優勝を果たし、見事芸人としてのセカンドブレイクを決めたコンビ・マシンガンズ。

ツッコミ担当の滝沢秀一は、芸人と兼業してきたゴミ収集員としてのキャリアを活かし、日々SNSでゴミ捨てに関する経験談を発信し反響を得ている。そんな滝沢にゴミ捨て問題の今と、売上好調な自著『ゴミ清掃員の日常~ゴミ分別セレクション~』の見どころについて聞いた。


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■妻・友紀さんと書き上げた著書

マシンガンズ・滝沢秀一

──今年は大活躍の一年になりましたね。今夏発売となったコミックエッセイ『ゴミ清掃員の日常~ゴミ分別セレクション~』(講談社)も高評価レビューが連発しています。

滝沢 ありがとうございます。これまでいくつかゴミ捨てに関する書籍を出してきましたが、今回はより私生活に基づいたゴミ捨て術だけを集約しました。

例えば、ピザの箱は可燃ごみか、古紙回収の際に出すごみなのか。材質がダンボールなので資源ごみと思っているかたも多いのですが、ピザの油が染み込んでいたりして、回収後ダンボールとして再生させることが難しいケースがあるのです。なので、大半の地域では可燃ごみ。捨てたかたも一生懸命リサイクルを考えてくれた上で古紙回収を選んだと思うのですが…。


──…初めて知りました! でもピザの箱はゴミ袋だとかさ張るので、ダンボールごみと一緒に出したくなる気持ちもわかりますね。

滝沢 そうなんですよね。なので本書では、ピザボックスをゴミ袋に入れる際、どうしたら袋のスペースを邪魔しないか、さらには袋を突き破らないかなどもアドバイスしています。ちなみに、さきほど「大半の地域では」とご説明したのは、自治体によってゴミ捨てルールは様々なので、私は担当していたエリアでのルールを中心にお話するようにしています。今回は、コロナ後のゴミ変化にも言及しており、ぜひみなさんに読んでいただきたいです。


──イラストは、前作同様すべて奥様の友紀さんがお描きになられていますね。

滝沢 元々、漫画家でもイラストレーターでもなんでもなかったんですけどね(笑)。絵がどんどん上手くなってるんです。本作は、過去の作品の抜粋に描き下ろしを加えているのですが、新作のタッチもご好評いただいていて嬉しい限りです。妻も一緒に本を作りながら、ゴミ捨てに関する意識が変わったと言ってくれています。


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■「罪悪感なくゴミを捨てたい」ニーズ

マシンガンズ・滝沢秀一

──書籍でもSNSでも、やはり皆知っているようで知らなかった「ゴミ捨ての正しい知識」を改めて啓蒙されたのが大きかったように感じます。

滝沢 ゴミっていうものは、ゴミ袋に入れて捨てたら普通は終わりなんです。でもそこから先、回収する僕らはその先の問題点も見えたりする。例えば「ずいぶん生ごみ、食べ残しが多いなあ」とかはよく思います。

食品ロスの問題などが近年話題に挙がりますが、それをリアルに見ているのが僕らだったりして、町全体のごみを集めると、「こんなに食べ残しがあるのか…」と不安になるくらい。未開封のまま賞味期限切れで捨てられている物も結構多いのです。なので、日々の巧みなゴミ出し術に加え、そういったゴミそのものを改めて発信することが、最近は多くなりました。

活動を続ける中で、特に主婦のかたがよくおっしゃるのが、「罪悪感なくゴミを捨てたい」という言葉。自分の捨てかたがじつは間違っているのではないか、清掃員の人は怒っているのではないか、という不安を感じつつゴミ出しをされているということです。例えば、包丁なんかは不燃ごみになりますが、時々そのまま袋に入れて捨てられるかたもいます。そんな時は、ダンボールで刃の部分をしっかり包んでテープ止めした上で捨てていただければ回収側も安全で、モアベター。

燃えるごみでは竹串。私も回収作業をしている際、竹串が手に刺さったことがありますが、ティッシュの空き箱や牛乳パックに入れてからゴミ袋に入れていただければ、より安全に回収することができます。そんなちょっとした工夫でできるゴミとの“向き合いかた”を紹介しつつ、ゴミ捨てに対する不安を一つでも解消できればと日々考えています。


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■高級住宅街を回っていて感じたこと

──私もとりあえず分別できていれば問題ないと思っていましたが、まだまだ考えが浅かったと本を読んで思いました。

滝沢 いえいえ、無理やり強要するつもりもないのです。一つ一つゴミと丁寧に向き合うことで、なんというか「生きかた」や、強いて言えば「人生」も丁寧になると僕は感じるのです。清掃員として、色々な町を担当してきましたが、ある時「ごみを見ると生活がわかる」と感じたことがありました。ゴミ袋を収集車に放り込むと、プレス機で圧縮しますよね。その時にだいたい袋が破けたりするので、どうしても目に入ってしまうんです。

興味深いことに高級住宅街はゴミが少ない。普通のエリアではコンビニ弁当の空き箱やペットボトル、空き缶、ファストファッション店の洋服などが目立つのですが、そういうものが少ないのです。おそらくしっかり自炊されていたり、使い捨てではなくしっかり長く使えるものを使用し続けているのではないかと推測していました。

なので、お金持ちの方々のゴミ捨てをマネしていたらお金持ちになるんじゃないかと思って、僕も実践したんですよ。お金持ちになったかどうかは一度置いておいて(笑)、「安かろう悪かろう」な物を気軽に買わなくなり、しっかり考えて、長く使える物を買おうと。愛煙家でしたが、大量の吸い殻ゴミを見ているうちにタバコも止めました。またドリンク剤も飲むことを止め、しっかり休息をとることもしました。だいぶ人間性が変わったと思いますね。


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■「ゴミを拾うと、運をつかめる」

マシンガンズ・滝沢秀一

──ゴミを見ると、生きかたもわかる。これは面白い視点です。

滝沢 そもそも一般のかたは、ゴミ捨てについて勉強した経験も機会もないわけです。かといって誰かに教わることもない。ゴミ捨てに関するパンフレットを1枚渡されて「ルールを守りなさい」と言われてもなかなか難しいと思います。だから、学校で一時間くらいで良いので地域のゴミ出しの仕方なんかを学ぶ機会があったら…なんていつも考えています。そうすれば、よりルールを守ったゴミ出しができて、リサイクルがさらに効率化され、食品ロス軽減にもつながるかもしれない。

僕たちも、直接お話できる機会があれば地域の方々の疑問点にお答えしたいのです。「こういうゴミはこう捨てるといいですよ」と。ただ、現場でできることは「これは回収できません」というシールを貼るくらいなのです。なので、今後もネットや本を通じて発信し続けようと思っています。時には僕のX(旧・Twitter)にDMで質問が飛んでくることもあるんですよ。

地域によって収集ルールが違うので一概にはお答えできず困ることもありますが、でもそこからわかることは、やっぱり誰に聞いていいかわからないという悩みを皆さんお持ちということ。法律みたいに全国一律だと良いんですけどね。


──書籍のあとがきでは、滝沢さんが「プライベートで街のゴミ拾いをしている」という“裏エピソード”を奥様が明かされていました。

滝沢 ああ、そうですね(笑)。メジャーリーグで活躍している大谷翔平選手は、フィールドやベンチでゴミを拾っているそうです。「ゴミを拾うと、運をつかめる」という考えを持たれているそうで、そんな報道がされるたびに、ちょっとしたゴミ拾いブームが来ている気がするのです。

そんなことを僕もできないかな、と常々思っており、今年も各地でゴミ拾いイベントを行い、参加した子供たちには「人が捨てた物を回収すると、運が来るんだよ」と話しています。そんな色々なきっかけで、ゴミというものに興味を持ってくれたら嬉しいですね。

マシンガンズ・滝沢秀一

●『ゴミ清掃員の日常~ゴミ分別セレクション~』(原作・構成/滝沢秀一、まんが/滝沢友紀)講談社刊 定価:1,268円(本体1,153円)


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■執筆者プロフィール

キモカメコ佐藤:1982年東京生まれ。『sirabee』編集部取材担当デスク。

中学1年で物理部に入部して以降秋葉原に通い、大学卒業後は出版社経て2012年より秋葉原の情報マガジン『ラジ館』(後に『1UP』へ名称変更)編集記者。秋葉原の100店舗以上を取材し、『ねとらぼ』経て現職。コスプレ、メイドといったオタクジャンル、アキバカルチャーからスポーツまで精力的に取材しつつ、中年独身ひとり暮らしを謳歌する。

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(取材・文/Sirabee 編集部・キモカメコ 佐藤

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