バロック絵画3大ヘンタイって?山田五郎館長に学ぶ面白すぎる西洋美術入門
山田五郎館長が率いる「ヘンタイ美術館」、そのキャッチコピーは、「美術の歴史は、ヘンタイの歴史でもある」だ。
Facebookページも持つそのふしぎな組織が、「やりすぎバロック」と題して講演会(エキサイトイズム主催)を行なうと聞いて、早速しらべぇに出かけた。
「バロック」、その代表作は、たとえばヴェルサイユ宮殿。
そう聞くと格調高く荘厳なイメージを持つかもしれないが、その語源は「いびつな真珠」。真円など完成された美をめざすルネサンス芸術と比較して、「いびつで歪んだ」と実はdisっている概念なのだ。
山田館長によれば、歪みのもとは「豪華すぎ」「派手すぎ」「ドラマチックすぎ」といった、やりすぎにあるという。
今回は、なかでも特にやりすぎちゃった3人の“ヘンタイ”からバロック美術を眺めてみよう。
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①血の気の塊「暴力すぎ男」カラバッジョ
イタリアでは10万リラ札の肖像画にも使われていた国民的画家、カラバッジョ。キアロスクーロやテネブリズムと呼ばれる劇的な光と影の対比を使うのが作品の特徴だ。
それは、上の画像の「トカゲに指を噛まれた瞬間」や「頸動脈を斬られているとき」など、一瞬をドラマチックに切り取るための技。
それ以上にドラマチックで血の気が多かったのが、彼自身の人生。ミラノ、ローマ、マルタ島と行き着く先々で傷害沙汰や果てには殺人事件まで犯し、最期はローマ法王の恩赦を得た直後に野垂れ死んだという。
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②ぽっちゃりの代名詞となった「デブ専すぎ男」ルーベンス
「フランダースの犬」の主人公ネロが亡くなる前、大聖堂に閉じられた絵をひと目見たいと願った作品を描いたのがルーベンス。「キリスト昇架」という作品である。
アントワープの街に巨大な工房を持ち、各国の宮廷やカトリック教会から注文がひっきりなしだった彼のヘンタイポイントは、ぽっちゃり好きという範囲をかなり超えた“デブ専”ぶり。
最初のスリムな妻との17年の結婚生活で生まれた子供が3人なのに対して、52歳で当時16歳のぽっちゃり系エレーヌ・フルマンと結婚してからは、亡くなるまでの10年間に5人の子供をもうけたほど。
エレーヌをモデルにしたとも言われる上の画像の「三美神」、そのセルライトが隠せない体つきからもわかる通りだ。デブ専を意味する「ルベネスク」という言葉を生んだほどだという。
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③ジェットコースター人生で「自画像描きすぎ男」レンブラント
光と影の画家、として日本でも広く愛されるレンブラント。彼の人生は、傑作「夜警」に代表される前半生と、愛妻サスキアを亡くしてから転落を続けた後半生に大きく分けられる。
最後は貧民街に棲み、モデルを雇う金もないゆえに自画像を描きつづけたレンブラントの魅力は、むしろその後半生にある、と山田館長は語る。
最後の作品とも言われる、この「ゼウクシスとしての自画像」には、バロック絵画の派手さや豪華さを超越した達観さえ感じられる。
覇気と魅力にあふれる自分を描くだけでなく、老いさらばえた後も筆を置かなかった画家の執念、それはヘンタイと言っていいかもしれない。
天才とヘンタイは紙一重。そのやりすぎたこだわりを垣間見させてもらうのが、我々凡人に与えられた芸術の楽しみ方なのでしょう。
(取材・文/しらべぇ主筆・タカハシマコト、取材協力:エキサイトイズム/ヘンタイ美術館)