乗るのは1日に1人 JR北海道、極小51駅を廃止の方針
利用客の減少に悩むJR北海道がこのほど、極端に利用が少ない駅の廃止方針を改めて打ち出した。廃止の基準は、1日平均の乗車が1人以下。今年2月に「極端にご利用の少ない駅」として発表した58駅のうち、すでに廃止した7駅を除く51駅を対象にしているようだ。
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■JR北海道は「全線赤字」
同じく2月の発表によると、同社の鉄道事業は2014年度の1年間で414億円の赤字。運行する在来線13路線を30の区間に分けた場合での収支状況も全区間が赤字で、列車を運行すればするほど損がかさむ状況だ。
当然、100円の収入を得るためにかかる経費の金額を表す「営業係数」は、軒並み100円超。190万を超える人口を抱える札幌市の近郊5区間を合わせた場合で最も低い(収支率が高い)が、それでも107円になる。
なお係数が最も高い(収支率が低い)のは留萌線・留萌〜増毛区間の4,554円で、同区間は12月4日の運行を最後に廃止が決まっている。
また運行の経費には、駅の営業を維持する費用も含む。51駅を廃止する方針を打ち出した背景には、列車の運行を少しでも身軽にして維持したいという台所の苦しさが見え隠れする。
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■「極端にご利用の少ない駅」—豊ヶ岡
実際、「極端にご利用の少ない駅」はどういった状況にあるのだろうか。
2014年1月の札沼線・豊ヶ岡駅(樺戸郡月形町)では、16時台の下り列車から降りた客は1人。駅前に人家は見当たらず、木造の駅舎が林の中にポツンと建つ。
駅に通じる道路は除雪こそしてあるものの、足跡はほとんどない。間もなく日没を迎えると、ポツンとともる駅舎とホームの明かりを残して周囲は闇に閉ざされた。
1時間後に上り列車が到着したが、乗る客は再び1人。この間、人もクルマも駅を訪れることがなかった。
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■「極端にご利用の少ない駅」—初田牛
同じく2014年1月の根室線・初田牛駅(根室市)も似たような状況。もともと駅前に集落がなかったと考えられる豊ヶ岡駅とは異なり、こちらの駅前には開拓者が集落を築いていたようだ。
しかし人家は、数軒が残るのみ。碁盤目状に設けられた集落内の道路も半ば自然に返っていた。
駅舎は、2004年の写真と比べるとアルミ戸の腰板が張り替えられるなど放置されていた様子はない。とはいえ数時間の滞在でやはり人やクルマは現れず、1人の乗り降りもない列車が上り・下りの合わせて2本、ドアを開け閉めして去った。
仮に51駅が廃止になると、最も対象になる駅が多い宗谷線(旭川〜稚内)では、線内52駅の3分の1にあたる17駅が姿を消すことになる。
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(取材・文/しらべぇ編集部・前田昌宏)