マザコンで有名なイタリア人のマンマ(母親)より大切な最上級の存在とは?
©iStock.com/piccerella
イタリア人男性のマザコン率が高いのは世界的に有名ですが、イタリアにはお母さん以上に大切にされている存在があります。それは、お母さん(もしくはお父さん)のお母さんつまり「おばあちゃん」です。
おばあちゃん側も孫への溺愛っぷりは尋常じゃありません。自分の世界一愛する子供の子供なわけですから、イタリアの孫達は生まれる前から無条件に愛され抜いて育ちます。
イタリアのおばあちゃんと孫を結ぶ愛の絆の深さを、イタリアに7年住んだ筆者が実体験や友人達から実際に聞いた話をもとにお届けしたいと思います。
■ノンナ(おばあちゃん)の深すぎる愛
イタリア人にとって、マンマ(お母さん)の存在は絶大。自立しても実家の近くに住み、結婚しても毎日会える距離に住む続ける人が、男女を問わず日本よりも圧倒的に多いです。その環境で、子供が居ながらにして共働きとなると、マンマ(ノンナ)のちからを頼らざるを得ません。
子供達は小さいうちからノンナの元に預けられ、ノンナ(おばあちゃん)の料理を食べ、ノンナの愛情をたっぷり受けて育つのです。
「私の義母は、子供達へのクリスマスプレゼントを早めに購入するんだけど、それをクリスマスまで待てずにすぐあげるっていう行動を10月から繰り返してる。だから子供達はいつもノンナに会いたがる。100%言うことを聞いてもらえるから」
「義母はうちの息子を溺愛していて、親戚みんなで集まっても、パスタでも何でも最初に盛った料理は何でも息子が一番にもらえるし、それに大して誰も文句言わない」
ノンナにとって孫は天使。何でも言うことを聞いてしまうのです。
関連記事:なぜビジネスマンは「三国志」の格言が好きなのか?変な吹き替え映像も紹介
■ノンナの料理が世界一
イタリアには、それぞれの街にその街の郷土料理があります。その種類の豊富さは、もしかしたら日本以上かもしれません。しかし、本物の郷土料理の味を観光客が食べられる機会は皆無に等しいのです。なぜかは、イタリア人に聞いたらすぐにわかります。
筆者がボローニャに住んでいたときのこと。せっかくボローニャに住んだのだから、名物のラグーソース(日本でボロネーゼという名前で有名なミートソース)を食したいと思って、ボローニャ人の友達に「ボローニャで一番おいしいラグーが食べられるレストランを教えて」と聞いて回りました。返事はみんな同じ。
「うちのノンナのラグーが一番だから、それ以上のお店は知らない」
生まれた瞬間からノンナの愛情をひたすらに受け、ノンナの料理を食べ続けて来た彼らにとって、ノンナ以上の存在はいないのです。
イタリアでは、有名レストランのシェフでも「ノンナから料理の影響を受けた」と公言する人は多く、イタリア人にとって「ノンナのような料理」は最高の褒め言葉です。
関連記事:ピザだけじゃない!「ナポリを見て死ね」とまで言われるナポリの魅力とは?
■イタリアでは日本人のおばあちゃん達もちやほやされる!?
これほどまでに、ノンナに愛され、ノンナを愛するイタリア人達は、とにかく「ノンナ」という存在に弱いのです。私がそれに気づいたのは、祖母と一緒にイタリアを旅行した時のこと。行く先々で、「ノンナと旅行中」というだけで親切にしてもらえたことが多々ありました。
例えば、宿泊先の冷蔵庫に突然、見たこともない大きなスイカが入れてあり、オーナーが「ノンナに食べてもらってね。ノンナは全ての人にとって世界一の女性だから、僕もノンナと宿泊するお客さんには世界一のおもてなしをしないとと思って」と言ってくれたり。
レストランで、おつりと領収書が載っていた受け皿があまりに素敵で祖母が眺めていると、お店の方が「もしかして、このお皿が気に入ってくれたんですか? じゃあ、これは今日からあなたのもの!」と祖母にプレゼントしてくれたり。
イタリア人達はノンナから無償の愛を学んでいるようです。
日本では、高齢社会が進む一方で核家族化が進んでいて、家族の絆が薄くなって来ているような気がします。イタリア風おばあちゃん子が日本にも増えると、お年寄りと若い世代がもっと歩み寄れるかもしれませんね。
(文/しらべぇ編集部・砂流恵介・辰巳真理)