「インスタント食品でゲイ」発言 LGBT公民権の険しい道
先日発生したアメリカ・フロリダ州での乱射事件は、同性愛者をターゲットにしたものでもあった。
国際的に見て、LGBTへの差別はまだ根強い。かつてヒトラーのナチス・ドイツは、ユダヤ人とともに同性愛者を強制収容所へ送ったが、現代でも「ゲイは隔離するべきだ」と主張する政治家が存在する。
LGBTの公民権運動の道は、非常に険しい。
■粉ミルクが人を同性愛者にする?
インドネシアは、LGBTに非寛容な国としても知られている。
ニューハーフを航空会社のキャビンアテンダントとして採用しているタイとは違い、インドネシアは「同性愛者」を理由にした解雇が相次いでいる。LGBTに関するインターネットからの情報に対しても、インドネシア通信情報省はこれをブロックしていくと明言。
そんな中、ジャカルタ首都圏を形成するタンゲラン市の市長がこう発言した。
「乳児には母乳が一番だ。インスタント食品や粉ミルクばかり与えていると、将来ゲイになってしまう」
この言葉に、国際社会はおろか現地市民ですら呆れ返っている。
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■言ってはいけない一言
ジャカルタ特別州とバンテン州タンゲラン市は行政区こそ異なるが、インドネシアへの投資を行っている外資経営者から見れば「同じ地域」と言っても過言ではない。
たとえば神奈川県相模原市は、東京都で勤務している人々のベッドタウンとして発展した都市。国道16号線という大幹線も通っている。タンゲランも、それとまったく同じ役割を果たしている。
そうである以上、海外の投資家を挑発するようなことは口が裂けても言えないはずだ。同性愛者だと公表している財界の巨人は、決して少なくはない。Appleのティム・クックCEOもそのひとりである。
市長の発言は、投資家心理に大きな悪影響を及ぼしかねないものなのだ。
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■宗教界でも大論争
だが現実問題、LGBTへの偏見や差別はあらゆるところに存在する。
アメリカ軍では少し前まで、「同性愛趣向が発覚したら即除隊」がルールだった。そのため戦地で輝かしい功績を上げた兵や下士官が、悪意の告発により相次いで除隊。現在のアメリカ軍は、その規定を見直している。
また、宗教界でもLGBTの問題は非常に大きなウェイトを占めている。キリスト教の一派である聖公会は、同性愛者に聖職を認める「ローチャーチ」と保守派の「ハイチャーチ」の間でしばしば論争が発生。
アメリカの聖公会はローチャーチが強く、「自分はゲイだ」と公言した人物が地区の主教に任命された。それに対して保守的なアフリカの聖公会から大きな反発が起こり、一時期は「聖公会が分裂するのでは」と騒ぎに。インドネシアでLGBTへの風当たりが強いのも、国民の大多数がイスラム教徒という要素はあるだろう。
「同性愛者を受け入れるか否か」ということは、一種の宗教問題でもあるのだ。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)