『飛田新地フィールドワーク』の問題点とは 「興味本位」以上に厄介

大阪『飛田新地』で人権団体が行なったフィールドワークが炎上しています。抗議の声をあげたひとり、SWASHメンバーの要友紀子さんに聞きました。

2016/12/02 06:00

 

■当事者への意思確認が必要だった

当事者といってもいろいろな意見があり、全員が全員、「見学目的・興味本位で来られるのはお断り!」というわけではないと思います。また、そのイヤ度合いも人によって差があるでしょう。

反対に、「見学だけでも研究目的で来ても気にしないよ」っていう人もいるかもしれません。

「場所や時間帯など条件次第でOK」という人もいれば、「相手の人柄やバックグラウンドによる」「関係性による」「謝礼の額による」「目的による」「やり方による」「性別による」「客になる潜在的可能性による」「コミュニティへの貢献度・還元度による」「金儲けのためのダークツーリズムでなければOK」などなど、いろんなレベルでのイヤがありOKがある。

また、「最初は快く受け入れたけど、その後の関係性が悪化したので、研究やフィールドワークの協力を撤回したい、原状回復を求めたい」という場合もありえます。

だからこそ私は、飛田フィールドワーク開催5か月前の今年6月の時点でも、人権学習団体の事務局宛てに、「見学にいくなら、ちゃんと当事者の人々に、『こういう目的で見に行きますが、いいですか? 嫌じゃないですか?』と、お伺いをたててから行くのが筋」とメールで進言してきました。

なので、今回の人権学習団体がまずかった大きなポイントのひとつは、見学目的で飛田に行くこと自体というより、「見学目的で飛田に行く前に、働いている人々や現場との調整や交渉を怠り、当事者に嫌な思いをさせるリスクを回避する努力をしなかったこと」です。

今回の飛田フィールドワークの何が問題なのか、まだよくわからないという方は、「新宿二丁目フィールドワーク」を事例にした松沢呉一さんの解説をお読みください。


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■画一的な視点が生む弊害

今回のじんけんスコラは、学習のやり方うんぬん以前の問題が多かったという事情もあり、伝えることができた懸念は上記の内容に限られてしまいました。

しかし欲を言えば、さらにもう一歩踏み込んで考えてもらいたいことがあります。

もし仮に一般的な話として、人権団体や慈善団体が現場との調整や交渉を行った上で、当事者らの了解のもと、性産業のフィールドワークを実施するとしたら「何も問題はない」と言えるのでしょうか?

もしそれが、「セックスワーカーに対するステレオタイプな見方や関心しか持ったことがない人々」によるものだとしたら?

私はこうした人権系や教育系のフィールドワークやスタディーツアーにいくつか参加したことがあります。

少数民族や被差別部落の人々の住む地域をまわったり、性暴力被害者がスタディーツアー参加者らを前に、涙を流しながら過去のことを思い出して具体的な被害を話すという内容のものや、障害者の人たちが働く施設を訪問し見学するものなどです。

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