雪深い栃尾の風土が育てた『越の鶴』 長岡藩の兵糧所だった歴史をもつ蔵元に聞く
上杉謙信が初陣を飾った栃尾で、将軍吉宗の時代から醸し続ける伝統の蔵。
■なめらかで丸みのある柔らかな酒が伝統の味
こうした長い歴史を持つ越銘醸の酒は、なめらかで、丸みのある柔らかな酒質。寒仕込みと伝統の製法を大切にしているという。
「大雪の年には2~3mも積もり、雪に覆われた土蔵の中は低温で温度が一定しています。これが酒造りにはとてもいい環境なんです。うちの酒は栃尾の風土に育まれたものです」
手間もコストもかかるが、手造りを軸にした伝統の醸造法はこれからも続ける方針と、小林社長。すうっと味わいが膨らみ、後口がきれいな、すっきりした旨口。言わば「淡麗旨口」を目標に造りに取り組んでいる。
代表銘柄は『越の鶴』、1972年にそれまでの『越の川』に代わって誕生した。
「万人に好かれるのは難しいけれど、欠点のない酒が理想です。香りが強すぎてもだめ、個性が強すぎてもだめで、10人中8人が美味いと感じる酒を目指したいです」
そのために低温でコントロールする温度管理と、上槽の粕歩合に注意しているそうだ。
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■栃尾の棚田産「越淡麗」100%で造られる『壱醸』
また栃尾は県内有数の棚田の里。秋には黄金色に染まる稲穂の波が見られる。しかし中越地震後には、やむなく多くの耕作放棄地が出現した。 そこで立ち上がったのが地元の日本酒小売店有志。
「棚田の生き物を愛する会」を作り、酒米「越淡麗」を育て始めた。 越銘醸でも共に田植え稲刈りに取り組み、その米を使って酒を醸した。
一から育てて醸し上げたので『壱醸』の名を付けて販売。米の収穫量が限られているので、新潟県内限定流通となっている。新酒ができると毎年披露パーティーを開催してきた。
毎回プレミアが付くほど好評で、10年間もイベントは続いた。 栃尾の棚田産「越淡麗」100%で造られる『壱醸』シリーズもまた、この土地の風土か育てた名酒である。
逆に首都圏を対象とした新潟県外限定の銘柄もある。3年前に新しく立ち上げた『山城屋』というブランドだ。
「蔵の裏山には上杉謙信が初陣を飾った栃尾城があったので、山に城で山城屋という屋号で当社では代々お酒を醸してきました。
杜氏を中心とした若手の蔵人たちが、この銘柄をリニューアル。酒質向上に果敢に挑戦し、旨さに磨きをかけています」 同時に、「屋号をブランド名にするのは流行だしね」
と社長は時代を読む目も忘れない。